- 前立腺肥大症について
- 前立腺肥大症の主な症状
- 前立腺肥大症の原因
- 前立腺肥大症になりやすい方について
- 前立腺肥大症の検査
- 前立腺肥大症の治療
- 前立腺肥大症を悪化させないために
- 前立腺肥大症に関するよくある質問
前立腺肥大症について
前立腺肥大症は、前立腺が大きくなることで尿道が圧迫され、さまざまな排尿トラブルを引き起こす病気です。
前立腺は男性にしかない臓器で、膀胱の出口付近にあり、尿道を囲むように位置する、くるみ大の臓器です。精液の一部である前立腺液をつくる役割があります。
前立腺は内腺と外腺の二つの部分に分かれており、特に内側の部分が大きくなると、尿道や膀胱が圧迫されます。
その結果、尿の勢いが弱い、尿が出にくい、頻尿、残尿感、排尿時の違和感、急に強い尿意を感じて我慢しにくい(尿意切迫感)、尿が漏れてしまうなどの症状が現れます。前立腺肥大症は、生活の質に大きく関わる病気です。「年齢のせい」と思って我慢せず、気になる症状があれば早めにご相談ください。
前立腺肥大症の主な症状
頻尿・切迫感
- 何度もトイレに行くようになった(頻尿)
- 急にトイレに行きたくなり、我慢しにくい(尿意切迫感)
尿の出にくさ
- 尿の勢いが弱くなった
- 排尿に時間がかかるようになった
- 排尿のときに力まないと出にくい
- 尿の勢いが途中で途切れる
排尿後の不快感
- 排尿後も尿が残っている感じがする(残尿感)
- 排尿後に下着をつけると少量の尿が漏れてしまう(排尿後尿滴下)
前立腺肥大症の原因
前立腺肥大症の原因は、はっきりとはわかっていませんが、主に関係していると考えられているのが男性ホルモンです。
通常、前立腺の働きは男性ホルモンによって保たれていますが、加齢に伴ってホルモンのバランスが変化することで、前立腺が徐々に大きくなるのではないかと考えられています。
また、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や、遺伝との関係も指摘されています。
前立腺肥大症と男性ホルモンの関係
前立腺肥大症には、男性ホルモンが深く関わっていると考えられています。
特に、男性ホルモンの代謝物であるジヒドロテストステロン(DHT)は、前立腺の肥大に大きく関与しています。
テストステロンは前立腺の中に取り込まれると、5α還元酵素という酵素の働きによってDHTに変換されます。
このDHTが前立腺の細胞に作用することで、細胞の増殖が促され、前立腺が徐々に大きくなると考えられています。
前立腺肥大症になりやすい方について
前立腺肥大症は、年齢とともに増えやすく、50歳前後からみられる方が増えてきます。前立腺そのものが大きくなる変化は30歳代頃から始まるとされ、加齢に伴ってその頻度は高くなります。
一方で、前立腺が大きくなっていても、すべての方に症状が出るわけではありません。実際に、排尿症状を伴い、治療が必要となる前立腺肥大症は一部に限られます。このように、年齢を重ねることは前立腺肥大症の大きな要因の一つです。
尿が出にくい、尿の勢いが弱い、夜間に何度もトイレに起きるなど、気になる症状がある場合は早めにご相談ください。
前立腺肥大症の検査
問診
IPSSスコア(国際前立腺症状スコア)は、前立腺肥大症による排尿のしづらさや頻尿、残尿感などの症状を7つの質問で数値化し、軽症・中等症・重症の3段階で評価する世界共通の指標です。
診察をスムーズに進めるため、問診の前にあらかじめご自身でご回答・ご確認いただくことをおすすめします。事前に症状の程度を把握しておくことで、より適切な診断や治療方針の検討につながります。
尿検査
尿の中に血が混じっていないか、尿路感染症の有無などを確認します。
血液検査(PSA検査)
前立腺から出るタンパク質であるPSA(Prostate-SpecificAntigen)を採血で確認します。場合によっては血清クレアチニンも測定します。
PSAは前立腺がんのスクリーニングに有効で、通常は4ng/mL以下ですが、前立腺がんがあると数値が上昇します。
超音波検査
お腹の上から超音波(エコー)をあてて、前立腺の大きさや状態を確認します。
また、排尿後に膀胱内へ尿がどの程度残っているかを調べるほか、残尿が多い場合には、腎臓に尿がたまって腫れる水腎症の有無も確認します。
尿流量測定
尿流量測定は、排尿時の尿の勢いを調べる検査です。
トイレ型の検査機器で、普段どおりに排尿していただくだけで、尿の勢い(最大尿流率・平均尿流率)、1回の排尿量、排尿時間などを測定することができます。
この検査により、尿が出にくい、尿の勢いが弱いといった排尿障害の程度を確認することができ、前立腺肥大症や神経因性膀胱、過活動膀胱などの診断や評価に役立ちます。
また、検査後に超音波で残尿量を確認することで、より詳しく状態を把握することができます。
検査は痛みを伴わず、短時間で行うことができますが、正確に評価するためには、ある程度尿がたまった状態で行うことが大切です。
そのため、受診前はできるだけ排尿を控えてご来院いただくようお願いしております。
なお、十分に尿がたまっていない場合には、正確な評価が難しいことがあります。
一方で、尿をあまりためられない場合も、膀胱に尿をためる力の低下や過活動膀胱などを考えるうえで参考になることがあります。
前立腺肥大症の治療
内服治療
前立腺肥大症の治療では、まず薬物療法が第一選択となります。
症状や前立腺の大きさに応じて適切な内服治療を行い、排尿症状の改善を目指します。
一方で、お薬だけでは十分な改善が得られない場合や、副作用などの理由で内服治療の継続が難しい場合には、手術治療も検討します。
手術治療
経尿道的水蒸気治療(ウェーブ/WAVE:Water Vapor Energy Therapy)とは
当院では、前立腺肥大症に対する日帰り治療として、経尿道的水蒸気治療(ウェーブ/WAVE)を導入しております。
WAVEは、高温の水蒸気(約103℃)を前立腺に注入し、その熱エネルギーによって肥大した組織を縮小させることで、尿道の圧迫をやわらげ、排尿しやすい状態を目指す治療です。
治療時間は10分程度と比較的短く、従来の前立腺肥大症手術と比べて身体への負担が少ないことが特徴です。また、術後の尿失禁や性機能低下のリスクが比較的低く、逆行性射精も起こりにくい(約2%)治療法とされています。
2022年9月に保険適用となり、健康保険で受けることが可能です。
どのような方に向いているか
WAVEは、前立腺肥大症による排尿症状でお困りの方のうち、特に次のような方に向いている治療です。
診察や検査を行ったうえで、患者さん一人ひとりに合った治療法をご提案いたします。前立腺肥大症の症状でお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください
今までの標準的な手術
前立腺肥大症の手術治療として、長年標準的に行われてきたのが経尿道的前立腺切除術(TURP)です。尿道から内視鏡を挿入し、先端の電気メスで肥大した前立腺組織を内側から削り取る方法で、高い改善効果が期待できます。一方で、組織を切除するため出血のリスクが比較的高く、術後は一般的に4〜8日程度の入院が必要とされています。
こうしたTURPの課題を補う治療法として普及してきたのが、ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)です。高出力レーザーを用いて、肥大した前立腺の内側部分を外側の膜から丁寧にくり抜くように取り除く手術です。レーザーには高い止血効果があるため、TURPと比べて出血が少なく、抗凝固薬を服用している方にも対応しやすい点が特徴です。ただし、HoLEPも全身麻酔または下半身麻酔を伴う手術であり、入院期間は一般的に4〜7日程度となります。
| WAVE(水蒸気治療) | HoLEP(レーザー核手術) | TURP(電気メス切除術) | |
|---|---|---|---|
| 治療時間 | 約10分 | 約60分~120分 | 約60分 |
| 麻酔方法 |
局所麻酔+静脈麻酔 |
全身麻酔または下半身麻酔 | 全身麻酔または下半身麻酔 |
| 入院期間 | なし | 4~7日程度 | 4~8日程度 |
| 出血のリスク | 少ない | 比較的少ない | 比較的高い |
| 性機能への影響 | 影響は少ない | 逆行性射精を発症する可能性あり | 逆行性射精を発症する可能性あり |
| 再治療率 | 約4% | 5%未満 | 約10~15% |
前立腺肥大症を悪化させないために
前立腺肥大症は、加齢とともに起こりやすくなるため、完全に予防することは難しい病気です。しかし、生活習慣を整えることで、症状の悪化を防いだり、排尿の負担を軽くしたりできる可能性があります。
前立腺肥大症と診断されている方は、日常生活の中で次のような点に気をつけましょう。
- 尿意を感じたら我慢せず、早めにトイレに行く
- 便秘がある場合は改善する
- 下半身を冷やさないようにする
- アルコールやカフェイン、香辛料などの刺激物を摂りすぎない
- 長時間座り続けないようにする
- 適度な運動を習慣にする
- 水分は1日を通じてこまめに摂り、就寝前の過剰な水分摂取は控える
- バランスのよい食事を心がけ、体重を適切に保つ
気になる症状がある場合は、我慢せずお気軽に当院泌尿器科へご相談ください。
よくある質問
前立腺肥大症は治りますか?
症状に応じて、薬物療法や生活習慣の改善、必要に応じて手術を行います。早めに治療を始めることで、症状の悪化を防ぎながら生活の質を保つことができます。
自然に治ることはありますか?
自然に前立腺が小さくなることはほとんどありません。軽症の場合は生活習慣の工夫で症状が落ち着くこともありますが、進行すると薬物治療や手術治療が必要になることがあります。
前立腺肥大症の薬を飲んでいるとき、風邪薬を服用しても大丈夫ですか?
風邪薬の中には、尿が出にくくなるものや前立腺肥大症の薬の効果に影響するものがあります。必ず医師に相談してください。他の薬を飲む場合も、事前に相談することをおすすめします。
前立腺肥大症と前立腺がんの違いは何ですか?
どちらも前立腺の病気ですが、前立腺肥大症は良性の病気であり、がんではありません。
一方、前立腺がんは前立腺に発生する悪性腫瘍です。ただし、排尿症状などが似ていることもあるため、検査によってきちんと見分けることが大切です。
また、前立腺肥大症と前立腺がんが合併してみられることもあります。
前立腺肥大症を放置するとどうなりますか?
前立腺肥大症を放置してしまうと、症状が徐々に進行し、尿が出にくくなる、何度もトイレに行きたくなる、夜間に何度も起きる、尿路感染症を繰り返すなど、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
さらに進行すると、尿がまったく出なくなる尿閉や、膀胱機能の低下、腎機能への悪影響を引き起こすことがあります。
重症の場合には、腎不全などの深刻な状態につながることもあるため、気になる症状がある場合は早めに泌尿器科専門医へご相談ください。
前立腺肥大症でやってはいけないことはありますか?
尿意を我慢する、アルコールやカフェインの過剰摂取、便秘を放置する、長時間座り続けること、そして体を冷やすことは避けましょう。これらは症状を悪化させる可能性があります。
前立腺肥大症に良い食べ物はありますか?
前立腺肥大症を食事だけで治すことはできませんが、症状の悪化を防いだり、前立腺の健康を保つうえで、日々の健康的な食事は大切な役割を果たします。
積極的に摂りたい食品
トマト
リコピンという抗酸化成分が豊富で、前立腺の炎症を抑える効果が期待されています。生より加熱調理(トマトソースなど)のほうが吸収率が高まります。
大豆製品(豆腐・納豆・豆乳)
大豆に含まれるイソフラボンは、前立腺肥大の進行を抑える可能性があるとされています。日本の伝統的な食生活との相性も良い食品です。
カボチャの種 カボチャの種には亜鉛が豊富に含まれており、前立腺の健康維持に役立つとされています
緑茶
カテキンの抗炎症・抗酸化作用が前立腺に良い影響を与える可能性があります。
青魚(サバ・イワシ・サーモンなど)
オメガ3脂肪酸が炎症を抑え、前立腺の健康維持に役立つとされています。
控えたほうが良いもの
アルコール・カフェイン
膀胱や尿道を刺激し、頻尿や残尿感を悪化させることがあります。
辛い食べ物
同様に尿道を刺激します。
動物性脂肪の多い食事
前立腺肥大のリスクと関連するとされています。
当院からのひとこと
食事はあくまでも生活習慣の一部です。「尿が出にくい」「夜中に何度もトイレに起きる」といった症状がある場合は、食事の改善だけで様子を見ず、お気軽にご相談ください。前立腺肥大症には、症状を効果的に改善する薬物療法や手術療法があります。

