泌尿器がんについて
泌尿器がんとは、尿をつくる・ためる・排出する臓器や、男性生殖器に関わる臓器にできるがんのことです。
代表的なものには、前立腺がん、膀胱がん、腎がん、腎盂・尿管がん、精巣腫瘍などがあります。
泌尿器がんは、早期に見つけて適切な治療につなげることが大切です。治療方法には、手術療法、放射線治療、薬物療法などがあり、がんの種類や進み具合、患者さんの全身状態などをふまえて治療方針を決定します。
痛みのない血尿は危険サイン!膀胱がんの 症状や原因、検査方法、治療、予防方法について
前立腺がん
前立腺がんについて
前立腺は、男性の膀胱のすぐ下にある臓器です。
精液の一部となる前立腺液をつくり、精子の働きを助ける役割があります。
前立腺がんとは、この前立腺にできる悪性腫瘍のことです。
前立腺がんは50歳以上の男性に多くみられ、年齢が上がるにつれて発症リスクが高くなります。特に70歳以上では、前立腺がんが見つかる頻度が高くなる傾向があります。
原因は一つではありませんが、加齢、家族歴、脂肪の多い食生活などが関係していると考えられています。
前立腺がんの症状
前立腺がんは、初期には自覚症状がほとんどないことが多く、PSA検査をきっかけに見つかることもあります。
進行すると、頻尿、尿が出にくい、尿の勢いが弱い、残尿感などの症状が現れることがあります。
さらに進行すると、血尿がみられたり、骨に転移して腰痛や背中の痛みを引き起こしたりすることもあります。
前立腺がんの検査
前立腺がんが疑われる場合、まず血液検査でPSA(前立腺特異抗原)の値を確認します。PSAは、前立腺がんの可能性を調べるための重要な検査です。
PSA値が高い場合には、必要に応じてMRI検査などを行い、前立腺内にがんを疑う所見がないかを確認します。
前立腺がんの診断を確定するためには、前立腺の組織を採取して調べる前立腺生検が必要です。当院では、日帰り・局所麻酔で前立腺生検を行っております。
前立腺がんと診断された場合には、CT検査や骨シンチグラフィなどで、リンパ節や骨への転移の有無を確認します。治療や追加検査が必要な場合には、適切な専門医療機関へご紹介いたします。
前立腺がんの治療
前立腺がんの治療は、がんの進み具合や悪性度、PSA値、患者さんの年齢、全身状態、ご希望などを総合的に考えて決定します。
前立腺がんの中には、進行がゆっくりなものもあり、すぐに治療を行わず、定期的な検査で慎重に経過をみる監視療法を選択できる場合もあります。
治療が必要な場合には、病状に応じて、手術療法(ロボット支援手術など)、放射線治療、ホルモン療法などの薬物療法を検討します。
手術療法や放射線治療など、専門的な治療が必要な場合には、適切な専門医療機関へご紹介いたします。
膀胱がん
膀胱がんについて
膀胱がんとは、尿をためる働きのある膀胱にできる悪性腫瘍です。
膀胱がんは60歳以上の方に多くみられ、女性よりも男性に多い傾向があります。
主なリスク因子としては喫煙が知られており、喫煙している方は膀胱がんのリスクが高くなるとされています。
その他にも、慢性的な膀胱の炎症、膀胱結石、過去の放射線治療、一部の化学物質への曝露などが関係することがあります。
膀胱がんの症状
膀胱がんの主な症状は、痛みを伴わない肉眼的血尿です。
血尿は、目で見てわかる赤い尿として現れることもあれば、健診や尿検査で初めて指摘されるような、目ではわからない血尿として見つかることもあります。
特に、目で見てわかる赤い尿を肉眼的血尿といいます。肉眼的血尿は一時的に出て、その後しばらく治まることがあり、「もう治った」と自己判断して放置されてしまうケースもあります。
病状が進行すると、頻尿、排尿時痛、尿が出にくい、腰痛、下腹部痛などの症状が現れることがあります。
肉眼的血尿を認めた場合は、痛みがなくても自己判断で様子を見すぎず、泌尿器科で検査を受けることが大切です。
膀胱がんの検査
膀胱がんが疑われる場合には、まず尿検査や尿細胞診検査を行い、血尿の有無や、尿の中にがん細胞が疑われる異常な細胞がないかを確認します。
また、膀胱鏡検査を行い、膀胱の中を観察して、腫瘍がないかを確認します。
そして、CT検査などの画像検査を行い、がんの広がりや、腎盂・尿管など他の尿路に病変がないか、リンパ節や他の臓器への転移がないかを確認します。
膀胱がんの治療
膀胱がんの治療方針は、がんの進行度、悪性度、膀胱壁への深達度、転移の有無、患者さんの年齢や全身状態などをふまえて総合的に判断します。
膀胱内に腫瘍が見つかった場合には、確定診断と治療を兼ねて、TUR-BT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)という内視鏡手術が行われます。尿道から内視鏡を挿入し、腫瘍を切除して、切除した組織を顕微鏡で詳しく調べます。
この検査・治療によって、がんの悪性度や、膀胱の壁にどのくらい深く入り込んでいるかを確認します。特に、がんが膀胱の筋層まで達しているかどうかは、その後の治療方針を決めるうえで重要です。
筋層非浸潤性膀胱がん
がんが筋層まで達していない筋層非浸潤性膀胱がんでは、TUR-BTによる切除が治療の中心となります。再発予防のために、手術後に抗がん剤やBCGを膀胱内に注入する治療を行うこともあります。国立がん研究センターも、TURBT後に筋層非浸潤性膀胱がんの再発や進展予防を目的として、抗がん薬やBCGの膀胱内注入療法が行われると説明しています。
筋層浸潤性膀胱がん
一方、がんが筋層まで入り込んでいる筋層浸潤性膀胱がんでは、内視鏡手術だけで治療することが難しい場合があり、膀胱全摘除術や尿路変更術、薬物療法、放射線治療などを病状に応じて検討します。
転移性膀胱がん
リンパ節や他の臓器に転移がある場合には、抗がん剤治療、免疫チェックポイント阻害薬、その他の薬物療法などを中心に治療を行います。
当院では、膀胱鏡検査や尿検査、画像検査などを行い、膀胱がんが疑われる場合や専門的な治療が必要と判断した場合には、適切な専門医療機関へご紹介いたします。
腎がん(腎細胞がん)
腎がん(腎細胞がん)について
腎がん(腎細胞がん)とは、腎臓にできる悪性腫瘍のことです。
腎臓は、血液をろ過して尿をつくり、体内の水分や塩分のバランスを調整する働きをしています。
腎がんは初期には自覚症状がほとんどなく、健康診断や他の病気の検査で偶然見つかることが多いです。
また、腎臓の中でも尿の通り道である腎盂にできる腎盂がんは、腎がんとは別の種類のがんです。
腎がんは女性よりも男性に多くみられる傾向があり、喫煙、高血圧、肥満などがリスク因子として知られています。長期間の人工透析も、腎がんの発症リスクに関係するとされています。
腎がんの症状
腎がんは、初期には自覚症状がほとんどないことが多い病気です。
進行すると、血尿、背中やわき腹の痛み、腹部のしこりなどがみられることがあります。
また、発熱、貧血、食欲不振、体重減少、だるさなどの全身症状が現れる場合もあります。
自覚症状がないまま見つかることもあるため、健康診断や画像検査で異常を指摘された場合は、泌尿器科で詳しく確認することが大切です。
腎がんの検査
腎がんが疑われる場合には、腹部超音波検査やCT検査、MRI検査などの画像検査を行い、腫瘍の大きさ、できている場所、周囲への広がり、リンパ節や他の臓器への転移の有無などを確認します。
当院では、必要に応じて腹部超音波検査やCT検査を行います。MRI検査など、より詳しい検査が必要と判断した場合には、適切な専門医療機関へご紹介いたします。
腎がんの治療
腎がんの治療は、手術療法が中心となります。
腎がんの大きさや場所、進み具合、患者さんの腎機能や全身状態などを総合的に判断し、腎臓の一部を切除する腎部分切除術や、腎臓全体を摘出する腎摘除術などを検討します。 小さな腎がんでは、可能な範囲で腎臓を温存する腎部分切除術を選択することができ、近年では、腹腔鏡手術やロボット支援手術など、体への負担を抑えた手術が行われることが多いです。
進行した腎がんでは、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などの薬物療法を検討することもあります。
手術療法や薬物療法など、専門的な治療が必要と判断した場合には、適切な専門医療機関へご紹介いたします。
腎盂・尿管がん
腎盂・尿管がんについて
腎盂とは、腎臓でつくられた尿が集まる場所です。尿は腎盂から尿管を通って膀胱へ運ばれます。
腎盂・尿管がんとは、この腎盂や尿管にできるがんのことです。腎臓の近くにできるため腎がんと混同されることがありますが、腎がんとは別の種類のがんです。腎盂・尿管がんの多くは、膀胱がんと同じ尿路上皮がんという種類に分類されます。
主なリスク因子としては喫煙が知られており、その他にも一部の薬剤の長期使用、化学物質への曝露、遺伝的要因などが関係することがあります。
腎盂・尿管がんの症状
腎盂・尿管がんで最も多い症状は血尿です。
血尿には、目で見てわかる赤い尿である肉眼的血尿と、尿検査で初めてわかるような、目では確認できない顕微鏡的血尿があります。
腎盂・尿管がんによる血尿は、痛みを伴わないことが多く、一時的に血尿が出て、その後しばらく治まることもあります。
また、病状が進行して腫瘍により尿の流れが妨げられると、腎臓が腫れる水腎症を起こし、背中や腰の痛み、下腹部痛などの症状が現れることがあります。
血尿を認めた場合は、痛みがなくても自己判断で様子を見すぎず、泌尿器科で検査を受けることが大切です。
腎盂・尿管がんの検査
腎盂・尿管がんが疑われる場合には、尿検査や尿細胞診を行い、血尿の有無や、尿の中にがん細胞が疑われる異常な細胞がないかを確認します。
また、腹部超音波検査やCT検査などの画像検査で、腫瘍の有無、尿路の閉塞、水腎症の有無などを確認します。
必要に応じて、造影CT検査、膀胱鏡検査などを行い、がんの発生部位や広がり、転移の有無を詳しく調べます。さらに詳しい検査や治療が必要と判断した場合には、適切な専門医療機関へご紹介いたします。
腎盂・尿管がんの治療
腎盂・尿管がんの治療は、がんの進み具合や悪性度、患者さんの年齢、腎機能、全身状態などを総合的に考えて決定します。
がんが腎盂や尿管にとどまっている場合には、腎臓と尿管を一緒に摘出する腎尿管全摘除術が検討されます。
進行してリンパ節や他の臓器への転移がある場合には、薬物療法(抗がん剤治療や免疫チェックポイント阻害薬など)を中心に治療を検討します。また、痛みや出血などの症状をやわらげる目的で、放射線治療が検討されることもあります。
手術療法や薬物療法など、専門的な治療が必要な場合には、適切な専門医療機関へご紹介いたします。
精巣腫瘍(精巣がん)
精巣腫瘍(精巣がん)について
精巣腫瘍(精巣がん)とは、男性の精巣にできる悪性腫瘍です。
15〜35歳頃の若い男性に多くみられる傾向があり、若い世代でも注意が必要ながんの一つです。
精巣腫瘍は早期発見・早期治療が大切です。適切な治療を行うことで治癒が期待できる病気でもあるため、精巣の腫れやしこりに気づいた場合は、早めに泌尿器科を受診することが重要です。
精巣腫瘍の症状
精巣腫瘍の初期症状として、片方の精巣の腫れやしこり、硬さの変化がみられることがあります。
痛みを伴わない場合もあるため、精巣の腫れやしこり、左右差、違和感に気づいた場合は注意が必要です。
病状が進行すると、肺への転移により咳、息切れ、血痰がみられたり、後腹膜リンパ節への転移により腰痛や背中の痛みが出たりすることがあります。また、骨に転移した場合には、転移した部位に痛みが出ることもあります。
気になる症状がある場合は、自己判断せず早めに泌尿器科を受診しましょう。
精巣腫瘍の検査
精巣腫瘍が疑われる場合には、まず触診で精巣のしこりや腫れの有無を確認し、超音波検査で腫瘍の有無を調べます。
また、血液検査で腫瘍マーカーを測定し、AFP・hCG・LDH などの値を確認します。
精巣腫瘍と診断された場合や、転移の有無を調べる必要がある場合には、CT検査を行い、リンパ節や肺などへの転移がないかを確認します。
専門的な治療が必要と判断した場合には、適切な専門医療機関へご紹介いたします。
精巣腫瘍の治療
精巣腫瘍の治療では、まず腫瘍のある精巣を摘出する高位精巣摘除術が行われます。
手術後は、摘出した腫瘍の種類、腫瘍マーカーの値、CT検査による転移の有無などを確認し、追加の治療が必要かどうかを判断します。
精巣腫瘍には、主にセミノーマと非セミノーマという種類があります。セミノーマでは、病状に応じて経過観察、放射線治療、抗がん剤治療などを検討します。
非セミノーマでは、腫瘍マーカーの変化や転移の有無などをふまえて、経過観察、抗がん剤治療、後腹膜リンパ節郭清術などを検討することがあります。
治療方針は、腫瘍の種類や進行度によって大きく異なります。専門的な治療が必要と判断した場合には、適切な専門医療機関へご紹介いたします。
よくある質問
血縁者に前立腺がんの罹患者がいるのですが、それでも検査は1年に1回の頻度でよいのですか?
様々な悪性腫瘍の中でも前立腺がんは遺伝的要因の寄与が高いです。 血縁者に前立腺がんの家族歴を有する男性では前立腺がん罹患リスクは有意に高く、若年発症という特徴があります。(参考文献:前立腺癌診療ガイドライン (2023年版))前立腺がんが発症しても緩やかに進行する傾向があるため、血縁者に前立腺がんの罹患者がいる場合でも、元々のPSA数値にはよりますが、1年に1回の頻度でPSA検査を実施していれば基本的に問題ありません。
前立腺がんは早期がんと進行がんで治療法は異なりますか?
はい。前立腺がんは、がんの進み具合によって治療法が異なります。
がんが前立腺内にとどまっている場合には、前立腺全摘除術や放射線治療などによって根治を目指せることがあります。また、病状によっては監視療法を選択する場合もあります。
一方で、リンパ節や骨などへの転移を伴う進行がんでは、ホルモン療法などを中心とした薬物療法や、抗がん剤治療、症状をやわらげるための放射線治療などを検討します。進行がんでは、病気の進行を抑え、症状をコントロールする治療が中心になることがあります。
腎細胞がんは遺伝性の病気ですか?
腎細胞がんの多くは遺伝性ではありません。
ただし、まれにフォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病やバート・ホッグ・デュベ(BHD)症候群など、遺伝的な病気が関係して腎細胞がんを発症しやすくなる場合があります。
若い年齢で発症した場合、両側の腎臓に腫瘍がある場合、血縁者に腎細胞がんの方がいる場合には、遺伝的な要因について確認が必要になることがあります。
片方の腎臓を全摘出した場合に、どのような支障が生じますか?
腎臓は左右に2つあるため、片方を摘出しても、残った腎臓の機能が保たれていれば通常の生活を送ることが可能です。
ただし、腎臓が1つになることで、残った腎臓に負担がかかりやすくなります。高血圧、糖尿病、肥満などがある場合には腎機能に影響することがあるため、生活習慣に注意し、定期的に血液検査や尿検査で確認することが大切です。
精巣がんになった場合には、将来的に子どもを作ることはできませんか?
精巣がんと診断されても、将来的に子どもを持てる可能性はあります。
片側の精巣を摘出した場合でも、反対側の精巣機能が保たれていれば、自然妊娠が可能な場合があります。
ただし、抗がん剤治療や放射線治療によって精子をつくる機能に影響が出ることがあるため、将来お子さんを希望される場合には、治療前に精子凍結保存を検討することがあります。

