過活動膀胱について
過活動膀胱とは、突然起こる我慢しにくい尿意(尿意切迫感)を特徴とする病気です。多くの場合、日中の頻尿や夜間頻尿を伴い、尿意を感じてからトイレまで間に合わず、尿が漏れてしまうこともあります。
過活動膀胱の症状
このような症状はありませんか?
- 台所で水を使っていると、急に強い尿意を感じて漏れそうになる
- 仕事中も尿意が気になり、集中できない
- 外出先では、あらかじめトイレの場所を確認しておかないと不安になる
- 運転中に何度も車を止めて、トイレへ行くことがある
- 渋滞に巻き込まれてトイレへ行けなくなることに、強い不安を感じる
- 電車に乗っている途中で、トイレのために下車することがある
- トイレ休憩の少ないバス旅行への参加をためらってしまう
- 映画や観劇を、途中で席を立たずに最後まで楽しむことができない
このような症状があると、仕事や外出、旅行などが制限され、日常生活に大きな負担となることがあります。
日本で行われた調査では、過活動膀胱に罹患している方は、40歳以上では約1,000万人以上(およそ8人に1人)と報告されています。
過活動膀胱は、膀胱炎などの尿路感染症や、症状の原因となるほかの明らかな病気がないことを確認したうえで診断します。膀胱に十分な尿がたまっていない段階でも強い尿意を感じることがありますが、その仕組みや原因は患者さんによって異なります。
過活動膀胱は、一般的には直ちに生命に関わる病気ではありません。しかし、頻繁にトイレへ行く必要が生じたり、尿漏れへの不安が強くなったりすることで、生活の質を大きく低下させることがあります。
症状によって仕事や外出、旅行などに支障を感じている方は、一人で悩んだり我慢したりせず、お気軽に当院泌尿器科へご相談ください。
過活動膀胱の原因
過活動膀胱には、加齢に伴う膀胱や神経機能の変化、前立腺や骨盤内の病気、脳や脊髄の病気、生活習慣病など、さまざまな要因が関係します。
男性の過活動膀胱
男性では、前立腺肥大症によって尿の通り道が狭くなり、膀胱に負担がかかることで、尿意切迫感や頻尿などの症状が現れることがあります。ただし、男性の排尿症状がすべて前立腺肥大症によるものとは限りません。
女性の過活動膀胱
女性では、加齢や閉経に伴う女性ホルモンの低下、尿道や腟周囲の組織の変化、骨盤臓器脱などが症状に関係する場合があります。
また、脳梗塞や脳出血、パーキンソン病、脊髄損傷などによって、膀胱をコントロールする神経の働きが障害され、過活動膀胱に似た症状が現れることがあります。
過活動膀胱の検査
過活動膀胱と似た症状は、膀胱炎などの尿路感染症、尿路結石、前立腺肥大症、排尿後に尿が残る状態などでも現れることがあります。まれに、膀胱腫瘍などが関係している場合もあります。
そのため、尿意切迫感や頻尿などの症状だけで過活動膀胱と判断するのではなく、問診や尿検査などを行い、症状の原因となるほかの病気がないか確認することが大切です。
尿検査
尿検査では、尿中の白血球、赤血球、糖、タンパク質などを調べ、膀胱炎などの尿路感染症、血尿、糖尿病などが症状に関係していないか確認します。
尿路感染症が疑われる場合には、必要に応じて尿沈渣検査や尿培養検査を行います。また、血尿がある場合や尿路の腫瘍が疑われる場合には、尿細胞診などの追加検査を検討します。
超音波検査・残尿測定
超音波検査では、腎臓や膀胱の状態、尿路の拡張、膀胱内の結石や腫瘍を疑う所見、排尿後に膀胱内へ残っている尿量などを確認します。男性では、前立腺の大きさや形態についても調べます。
尿管そのものは超音波検査では観察しにくいことがありますが、尿路が詰まることで生じる水腎症などの所見から、尿管の異常が疑われる場合があります。
残尿が多い場合には、膀胱に新しくためられる尿量が少なくなり、頻尿や尿意切迫感の原因となることがあります。また、治療薬によって残尿が増える可能性もあるため、治療前後に確認することがあります。
血液検査
症状や持病に応じて血液検査を行い、腎機能、肝機能、血糖値、電解質、炎症反応などを確認します。
のどの渇きや尿量の増加がある場合には、糖尿病による多尿が関係していないか調べます。また、腎機能や肝機能の検査結果は、治療薬を安全に選択するための参考にもなります。
排尿日誌
排尿した時刻、1回ごとの尿量、尿意の強さ、尿漏れの有無、水分をとった時刻や量などを記録していただきます。
一般的には、普段どおりの生活を送りながら3日程度記録します。
排尿日誌によって、次のような状態を客観的に評価できます。
例えば、1回の尿量が少なく排尿回数が多い場合には、膀胱に尿をためにくくなっている可能性があります。一方、1回の尿量が比較的多いにもかかわらず頻尿である場合には、水分摂取量の増加や多尿などが関係している可能性があります。
排尿日誌は、過活動膀胱と、多尿・夜間多尿などによる頻尿を区別し、治療方針を検討するうえで重要な検査です。
過活動膀胱の治療
過活動膀胱の治療には、生活習慣の見直しや膀胱訓練などの行動療法、薬物療法、ボトックス膀胱壁内注入療法などがあります。
症状の程度、残尿量、持病、服用している薬、患者さんのご希望などを踏まえて、適切な治療方法を選択します。行動療法と薬物療法を組み合わせて行うこともあります。
行動療法
行動療法は、過活動膀胱に対する基本的な治療の一つです。水分のとり方や生活習慣を見直し、膀胱訓練や骨盤底筋体操などを行います。
水分摂取量・時間帯の見直し
水分を過剰にとると尿量が増え、頻尿や尿意切迫感が悪化することがあります。一方、水分を極端に控えると、脱水や便秘、尿路感染症などにつながる可能性があります。
水分は日中に適度に分けてとり、就寝前や外出前に一度に大量に飲むことは避けましょう。適切な水分量は、体格、季節、活動量、排尿量、持病などによって異なります。心臓病や腎臓病などで水分量について指示を受けている方は、自己判断で変更せず、主治医の指示に従ってください。
食事・飲み物の見直し
コーヒー、緑茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインや、アルコール、炭酸飲料などによって、尿意切迫感や頻尿が悪化する場合があります。
また、便秘によって膀胱が圧迫されると、排尿症状が悪化することがあるため、食事や運動などによって便通を整えることも大切です。
骨盤底筋体操
骨盤底筋体操は、膀胱や尿道を支える骨盤底筋を意識して締めたり緩めたりする運動です。
急な尿意を感じたときに、慌ててトイレへ走らず、立ち止まって骨盤底筋を数回締めることで、尿意が落ち着く場合があります。尿意切迫感や尿漏れの改善にも役立つことがあります。
骨盤底筋とは異なる腹筋や臀部に力が入っていると、十分な効果が得られないことがあります。正しい方法を確認し、無理のない範囲で継続することが大切です。
膀胱訓練
膀胱訓練は、尿意を感じてもすぐに排尿せず、無理のない範囲で排尿までの時間を少しずつ延ばす方法です。
最初は5分程度から始め、慣れてきたら徐々に排尿間隔を延ばします。
強い尿意を感じたときは、立ち止まって深呼吸をしたり、骨盤底筋を締めたりして、尿意が落ち着くのを待ちます。
ただし、痛みや強い不快感がある場合には、無理に我慢する必要はありません。また、膀胱炎や多量の残尿などがある場合には適さないことがあるため、泌尿器科医師の指導のもとで行いましょう。
薬物療法
膀胱訓練や生活習慣の見直しなどの行動療法だけでは十分な改善が得られない場合には、薬による治療を検討します。
過活動膀胱の治療薬には、膀胱の過剰な収縮を抑える薬や、膀胱に尿をためやすくする薬などがあります。症状、残尿量、持病、服用している薬などを確認し、患者さんの状態に適した薬を選択します。
ボトックス膀胱壁内注入療法
行動療法や薬物療法を行っても十分な改善が得られない場合や、副作用などによって薬物療法を継続することが難しい場合には、ボトックス(ボツリヌストキシン)膀胱壁内注入療法を検討することがあります。
この治療では、膀胱鏡を用いて膀胱壁の複数箇所に薬剤を注入し、膀胱の過剰な収縮を抑えます。効果持続期間は、4~6か月と言われており、時間の経過とともに弱くなるため、必要に応じて再治療を検討します。
当院では、難治性過活動膀胱の患者さんに対し、適応を確認したうえでボトックス膀胱壁内注入療法を行うことが可能ですので、ご相談ください。
よくある質問
過活動膀胱は放置しても自然に治りますか?
頻尿はすべて過活動膀胱が原因ですか?
過活動膀胱を放置すると、どのような問題がありますか?
過活動膀胱の場合は水分を控えた方がいいですか?
過活動膀胱と頻尿は同じ病気ですか?
過活動膀胱の治療期間はどのくらいかかりますか?
過活動膀胱の治療期間は、症状の程度や原因、治療方法、治療効果によって異なるため、一概にはいえません。
生活習慣の見直しや膀胱訓練などの行動療法、薬による治療では、数週間から数か月かけて症状の変化を確認します。効果が得られた場合でも、症状を良好に保つために治療を継続することがあります。
薬による治療で十分な効果が得られない場合には、ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法(ボトックス療法)などを検討することもあります。当院では、患者さんの状態や治療の適応を確認したうえで、日帰りで実施することが可能です。過活動膀胱の症状でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

