睡眠時無呼吸症候群について
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)は、睡眠中に呼吸が一時的に止まったり、浅くなったりする状態を繰り返す病気です。
睡眠中に無呼吸や低呼吸を繰り返すことで睡眠の質が低下し、大きないびき、日中の強い眠気、起床時の頭痛、熟睡感が得られない、倦怠感、集中力の低下、夜間頻尿などの症状がみられることがあります。一方で、睡眠時無呼吸症候群があっても、日中の眠気などの自覚症状が目立たない方もいます。日本呼吸器学会も、いびき、夜間頻尿、日中の眠気、起床時頭痛などを代表的な症状として挙げています。
睡眠時無呼吸症候群は、主に「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)」と「中枢性睡眠時無呼吸(CSA)」の2つのタイプに分けられます。
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)
睡眠中に、空気の通り道である上気道が狭くなったり塞がったりすることで、無呼吸や低呼吸が起こるタイプです。睡眠時無呼吸症候群の多くを占めます。
肥満によって首や喉の周囲に脂肪が蓄積することのほか、顎が小さい、顎が後退している、舌や扁桃が大きい、鼻づまりがあるなど、気道が狭くなりやすい身体的な特徴が関係することがあります。そのため、痩せている方でも閉塞性睡眠時無呼吸を発症することがあります。
中枢性睡眠時無呼吸(CSA)
睡眠中に、脳の呼吸を調節する中枢からの呼吸指令が一時的に低下・停止することで、呼吸が止まるタイプです。
心不全や脳・神経の病気、一部の薬剤などが関係することがあります。
日本では睡眠時無呼吸の潜在患者は非常に多いと考えられています。30~69歳を対象とした推計では、閉塞性睡眠時無呼吸が約2,200万人、そのうち中等症以上が約900万人いると報告されています。
一方で、実際に診断や治療を受けている方はその一部にとどまり、自分では気づかないまま睡眠時無呼吸を繰り返している方も少なくないと考えられています。
睡眠時無呼吸症候群は、高血圧や不整脈のほか、心筋梗塞などの心血管疾患や脳卒中などの脳血管疾患とも関連しています。また、日中の強い眠気によって、居眠り運転や仕事中の事故につながることもあります。そのため、大きないびきや睡眠中の無呼吸を指摘された場合や、日中の強い眠気など気になる症状がある場合には、適切な検査を受けることが大切です。
睡眠時無呼吸症候群の原因
閉塞性睡眠時無呼吸
睡眠時無呼吸症候群の多くを占めるのが、睡眠中に空気の通り道である上気道が狭くなったり塞がったりする「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)」です。
閉塞性睡眠時無呼吸には、次のような要因が関係します。
- 肥満により首まわりや喉の周囲に脂肪が蓄積し、気道が狭くなる
- 睡眠中に舌が喉の奥へ落ち込み、気道を狭くする
- 顎が小さい、顎が後退しているなど、気道が狭くなりやすい骨格的な特徴がある
- 口蓋扁桃やアデノイドが大きく、気道が狭くなっている
- 加齢などによって、睡眠中に上気道を支える筋肉の働きが低下する
また、就寝前の過度な飲酒や一部の睡眠薬・鎮静薬などによって、上気道を支える筋肉がゆるみ、いびきや無呼吸が悪化することがあります。
肥満は閉塞性睡眠時無呼吸の重要なリスク因子ですが、痩せている方でも、顎の形や舌・扁桃の大きさなどによって発症することがあります。
中枢性睡眠時無呼吸
睡眠時無呼吸症候群には、閉塞性のほかに「中枢性睡眠時無呼吸」と呼ばれるタイプもあります。
中枢性睡眠時無呼吸は、睡眠中に脳の呼吸を調節する中枢からの呼吸指令が一時的に低下または停止することで起こります。心不全や脳・神経の病気、一部の薬剤などが関係することがあります。
睡眠時無呼吸症候群の症状
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中だけでなく、起床時や日中にもさまざまな症状がみられることがあります。
睡眠時の症状
- 大きないびきをかく
- 睡眠中に呼吸が止まっていると家族やパートナーから指摘される
- いびきが一度止まり、大きな呼吸とともに再びいびきをかく
- 息苦しさや息が詰まるような感覚で目が覚める
- 夜中に何度も目が覚める
- 夜間に何度もトイレに行く(夜間頻尿)
- 寝相が悪く、落ち着いて眠れないことがある
など
起床時・日中の症状
- 熟睡した感じがせず、すっきり目覚められない
- 起床時に頭痛がする
- 日中に強い眠気を感じる
- 倦怠感や疲労感が続く
- 集中力や注意力が低下する
- 仕事や運転中に眠気を感じることがある
など
睡眠時無呼吸症候群があっても、日中の眠気などの自覚症状が目立たない方もいます。そのため、「眠くないから睡眠時無呼吸症候群ではない」と自己判断することはできません。
大きないびきや睡眠中の無呼吸を指摘された場合や、上記のような症状が続く場合には、一度医療機関へご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群を
放置するリスク
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に無呼吸や低呼吸を繰り返すことで、低酸素状態や睡眠の分断、交感神経の活性化などが起こります。
このような状態が続くと、高血圧や不整脈のほか、心筋梗塞や心不全などの心血管疾患、脳卒中、2型糖尿病などの発症や悪化と関連することが報告されています。
また、日中の眠気や倦怠感、集中力の低下、気分の落ち込みや意欲低下などがみられるほか、ED(勃起不全)などの性機能低下や、夜間多尿・夜間頻尿と関連することもあります。
高血圧
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中の低酸素状態や繰り返す覚醒によって交感神経が活性化し、血圧が上昇しやすくなります。
心臓病・不整脈
睡眠時無呼吸症候群では、低酸素状態や交感神経の活性化、胸腔内圧の変化などによって心臓や血管に負担がかかります。
そのため、狭心症や心筋梗塞、心不全、心房細動などの心血管疾患・不整脈との関連が報告されています。
脳卒中
睡眠時無呼吸症候群は、脳卒中の発症リスク上昇とも関連しています。
高血圧や動脈硬化、不整脈など複数の要因が関係すると考えられています。
2型糖尿病
睡眠時無呼吸症候群では、繰り返す低酸素状態や睡眠の分断などによってインスリンの働きが低下し、糖代謝に悪影響を及ぼす可能性があります。
交通事故・労働災害
睡眠時無呼吸症候群によって睡眠が十分にとれないと、日中の眠気や集中力・注意力の低下が起こることがあります。
その結果、居眠り運転による交通事故や仕事中の事故につながる可能性があります。
気分の落ち込み・意欲低下
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠の質の低下や慢性的な疲労などによって、意欲の低下や気分の落ち込みなどがみられることがあります。
性機能低下・ED
睡眠時無呼吸症候群は、男性のED(勃起不全)とも関連しています。
睡眠中の低酸素、血管内皮機能への影響、自律神経の変化、睡眠の分断など、複数の要因が関係すると考えられています。
夜間多尿、夜間頻尿
睡眠時無呼吸症候群では、夜間に何度もトイレに起きる「夜間頻尿」がみられることがあります。
睡眠時無呼吸によって夜間につくられる尿量が増える「夜間多尿」を起こす場合があるほか、無呼吸によって睡眠が浅くなり、途中で目が覚めることで排尿回数が増えることもあります。
睡眠時無呼吸症候群の検査
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には、まず簡易検査を行い、必要に応じてより詳しい精密検査(ポリソムノグラフィー:PSG)を行います。
簡易検査(アプノモニター)
ご自宅で検査機器を装着して眠っていただく検査です。
睡眠中の呼吸状態、いびき、血液中の酸素飽和度(SpO₂)などを記録し、無呼吸や低呼吸がどの程度起きているかを調べます。
身体への負担が少なく、ご自宅で普段と近い環境で検査できることが特徴です。
精密検査(ポリソムノグラフィー:PSG)
簡易検査だけでは診断や治療方針の判断が難しい場合には、必要に応じて精密検査(ポリソムノグラフィー:PSG)を行います。
PSGでは、呼吸状態や血液中の酸素飽和度に加えて、脳波、心電図、眼球運動、筋電図などを記録します。
これにより、実際に眠っている時間や睡眠の深さ、無呼吸・低呼吸が起きている回数などを詳しく調べることができます。
簡易検査で異常が軽度であっても、症状などから睡眠時無呼吸症候群が強く疑われる場合には、PSGによる詳しい検査を検討します。
AHI(無呼吸低呼吸指数)とは
睡眠時無呼吸症候群の重症度を評価する代表的な指標として、AHI(Apnea Hypopnea Index:無呼吸低呼吸指数)があります。
AHIは、睡眠1時間あたりに「無呼吸」と「低呼吸」が何回起こっているかを表す指標です。AHIの数値が高いほど、睡眠中に無呼吸や低呼吸が頻繁に起きていることを示します。
主な判定結果は以下となります。
| 軽症 | 5回以上15回未満 /時 |
|---|---|
| 中症 | 15回以上30回未満 /時 |
| 重症 | 30回以上/時 |
睡眠時無呼吸症候群の治療

生活習慣の改善
閉塞性睡眠時無呼吸症候群では、肥満や飲酒、睡眠時の体位などが、いびきや無呼吸の程度に影響することがあります。
生活習慣の改善は、軽症の方だけでなく、CPAPや口腔内装置(マウスピース)などの治療を行っている方にとっても大切です。
適正体重を目指す
肥満がある方では、首や喉の周囲に脂肪が蓄積することで上気道が狭くなり、睡眠時無呼吸が悪化することがあります。
食生活や運動習慣を見直し、適正体重を目指すことで、いびきや無呼吸が軽減することがあります。
就寝前の飲酒を控える
アルコールによって上気道を支える筋肉がゆるみ、いびきや無呼吸が悪化することがあります。
特に就寝前の飲酒や過度な飲酒は控えるようにしましょう。日本呼吸器学会も、睡眠時無呼吸症候群の生活上の注意として飲酒を控えることを挙げています。
横向きで眠る
仰向けで眠ると、舌が喉の奥へ落ち込み、上気道が狭くなりやすくなることがあります。
特に仰向けで無呼吸が悪化するタイプでは、横向きで眠ることによって無呼吸が軽減することがあります。
CPAP療法(Continuous Positive Airway Pressure:持続陽圧呼吸療法)
CPAPは、睡眠中に専用のマスクを装着し、機械から圧力をかけた空気を送り込むことで、上気道が狭くなったり塞がったりすることを防ぐ治療法です。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対する代表的な治療法で、特に中等症から重症の患者さんなどで広く行われています。CPAPを適切に使用することで、睡眠中の無呼吸や低呼吸、いびきの改善が期待できます。日本呼吸器学会でも、中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対する標準的な治療法として位置づけられています。
治療はご自宅で行い、就寝時に毎晩CPAPを装着します。一定の基準を満たす場合には、健康保険を利用して治療を受けることができます。
治療開始後は定期的に受診していただき、CPAPの使用時間や無呼吸・低呼吸の改善状況、マスクの装着状態などを確認します。また、鼻や喉の乾燥、マスクによる違和感などがある場合には、マスクの種類や加湿設定などを調整し、無理なく治療を継続できるようサポートします。
肥満などがある場合には、CPAP療法とあわせて体重管理や生活習慣の改善についても取り組みます。
口腔内装置(マウスピース)治療
口腔内装置(マウスピース)治療は、睡眠中に専用の装置を口の中に装着し、下顎を通常より前方に保持することで上気道を広げ、いびきや無呼吸の改善を目指す治療法です。
主に軽症から中等症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群で検討されるほか、CPAP療法を継続することが難しい場合などにも治療の選択肢となることがあります。
患者さん一人ひとりの歯並びや顎の状態に合わせて、歯科医療機関で専用の口腔内装置を作製します。
小型で持ち運びしやすい
口腔内装置は、就寝時に口の中へ装着して使用します。
CPAPのような機械や電源を必要とせず、比較的コンパクトなため、旅行や出張などの際にも持ち運びしやすいことが特徴です。
一方で、治療開始後には顎や歯の違和感、歯の痛み、口の乾燥や唾液の増加などがみられることがあります。また、長期間使用することで噛み合わせや歯並びに変化が生じる場合もあるため、定期的に歯科で状態を確認することが大切です。
定期的な通院が不要
マウスピースは患者さん一人ひとりに対して歯科でオーダーメイドされたものを使用します。一度作製すれば約5年間は使用できるため、定期的に微調整やメンテナンスを行っておけば定期的な通院頻度はCPAPより少ない場合があります。
患者さんに合わせて調整します
口腔内装置は、作製して終わりではありません。
治療効果と装着時の負担のバランスをみながら、下顎を前方へ移動させる程度を調整します。また、歯や歯周組織、顎関節、噛み合わせ、装置の状態なども定期的に確認します。
装置の調整後には、必要に応じて簡易睡眠検査や終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)などを行い、睡眠中の無呼吸や低呼吸が十分に改善しているか評価します。
当院では医科と歯科が連携して治療を行います
当院で睡眠時無呼吸症候群の検査・診断を行い、口腔内装置による治療が適していると判断した場合には、連携する歯科医療機関へご紹介します。
歯科では、歯や歯周組織、顎関節、噛み合わせなどの状態を確認したうえで、患者さんに合わせた口腔内装置を作製・調整します。
その後も医科と歯科で連携し、必要に応じて当院で睡眠検査を行い、無呼吸や低呼吸が十分に改善しているか確認しながら治療を継続します。
健康保険で口腔内装置を作製する場合には、医科で睡眠時無呼吸症候群と診断したうえで、医師から歯科医療機関へ診療情報を提供し、口腔内装置による治療を依頼します。
連携歯科医療機関:中村歯科医院(〒361-0071 埼玉県行田市栄町12-10)
よくある質問
どのような場合に睡眠時無呼吸症候群を疑いますか?
睡眠中に大きないびきをかく、呼吸が止まっていると家族やパートナーから指摘された場合には、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
そのほか、日中の強い眠気、起床時の頭痛、熟睡した感じがしない、倦怠感、集中力の低下、夜間に何度もトイレに起きるなどの症状がみられることもあります。
肥満は睡眠時無呼吸症候群の重要なリスク因子ですが、痩せている方でも、顎が小さい、顎が後退している、舌や扁桃が大きいなど、気道が狭くなりやすい身体的な特徴によって発症することがあります。
また、睡眠時無呼吸症候群があっても、日中の眠気などの自覚症状が目立たない方もいます。大きないびきや睡眠中の無呼吸を指摘された場合や、気になる症状がある場合には、一度医療機関へご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群は肥満の方だけに起こる病気ですか?
いいえ。肥満は睡眠時無呼吸症候群の重要なリスク因子の一つですが、痩せている方でも発症することがあります。
肥満によって首や喉の周囲に脂肪がつき、気道が狭くなることで発症しやすくなる一方、顎が小さい、顎が後退している、舌や扁桃が大きいなど、もともと気道が狭くなりやすい身体的な特徴が関係する場合もあります。
そのため、痩せている方でも、大きないびきや睡眠中の無呼吸を指摘された場合には、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群になると必ずいびきをかきますか?
いいえ。睡眠時無呼吸症候群の多くを占める閉塞性睡眠時無呼吸では、睡眠中に気道が狭くなることで大きないびきを伴うことが多くありますが、すべての方にいびきがみられるわけではありません。
また、いびきが目立たなくても、睡眠中に呼吸が止まっていると指摘される場合や、日中の強い眠気、起床時の頭痛、夜間頻尿などの症状がある場合には、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
そのため、いびきの有無だけで睡眠時無呼吸症候群かどうかを自己判断することはできません。
睡眠時無呼吸症候群は放置しても問題ありませんか?
睡眠時無呼吸症候群を自己判断で放置することはおすすめできません。
睡眠中に無呼吸や低呼吸を繰り返すことで睡眠の質が低下し、日中の眠気や倦怠感、集中力の低下などにつながることがあります。また、高血圧や不整脈、心筋梗塞や脳卒中などの心血管・脳血管疾患、2型糖尿病などとも関連しています。
さらに、日中の強い眠気によって、居眠り運転による交通事故や仕事中の事故につながる可能性もあります。
肥満がある方では、減量や生活習慣の改善によって無呼吸が軽減することがありますが、それだけでは十分に改善しない場合もあります。重症度や原因に応じて、CPAP療法や口腔内装置(マウスピース)などの治療が必要になることがあります。
大きないびきや睡眠中の無呼吸を指摘された場合、日中の強い眠気や起床時の頭痛、夜間頻尿などの症状がある場合には、一度医療機関へご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群の治療にはどのくらいの期間がかかりますか?
治療期間は、睡眠時無呼吸症候群の原因や重症度、治療方法によって異なるため、一概にはいえません。
肥満が関係している場合には、減量や生活習慣の改善によって無呼吸が軽減することがありますが、生活習慣の改善だけでは十分に改善しない場合もあります。
CPAP療法では、睡眠中に気道が狭くなったり塞がったりすることを防ぐため、長期間継続して使用することがあります。口腔内装置(マウスピース)による治療についても、装置を継続して使用しながら、歯や顎の状態、治療効果などを定期的に確認します。
体重の変化や治療によって睡眠時無呼吸の状態が改善した場合には、必要に応じて再検査を行い、治療内容を見直すことがあります。
睡眠時無呼吸症候群と診断された場合には、自己判断で治療を中止せず、定期的に状態を確認しながら、ご自身に合った治療を継続することが大切です。

